貝原益軒の説く「幼児教育」其の十

岩波文庫版の「和俗童子訓」に、
「朋友を選んで交わらせよ」という注釈のついた項目があります。

長崎市五島町の羅針塾 学習教室・幼児教室では、幼児教育の要諦として、友を選ぶことの大事さを常々お話しています。

英語の諺にも
Keep good men company and you shall be of the number.
(善人と付き合えば善人の仲間になれる。)
とあります。

さて、
貝原益軒先生の「和俗童子訓」。
江戸時代の子を持つ親に向けて分かり易く説いています。

<川原慶賀の「日本」画帳>より「長崎の雛まつり」

<読み下し文>

 子弟を教ゆるには、先(まず)其まじはる所の、友をゑらぶを要とすべし
其子のむまれつきよく、父のをしえ正しくとも、放逸(ほういつ)なる無頼(ぶらい)の
小人にまじはりて、それと往来すれば、必(ず)かれに引(ひき)そこなはれて、あしくなる。
いはんや、其子の生質(うまれつき)よからざるをや。
古人の言葉に、「年わかき子弟、たとひ年をおはるまで書をよまずとも、一日小人にまじはるべからず。」といへり。
一年書をよまざるは、甚(だ)あしけれど、猶それよりも、一日小人にまじはるはあしき事となり。
是悪友の甚(だ)害ある事をいへり。
人の善悪は、皆友によれり
古語(に)曰(いわく)、「麻の中なるよもぎは、たすけざれども、おのづから直し」
又曰、「朱にまじはれば赤し、墨に近づけば黒し」といふ事、まことにしかり。
わかき時は、血気いまた定まらず。
見る事、きく事、にうつりやすきゆへ、友あしければ悪にうつる事はやし。
もろこしにて、公儀の法度をおそれず、わが家業をつとめざるものを、無頼と云(いう)。
是放逸にして、父兄のおしえにしたがわざる、いたずらもの也。
無頼の小人は、必(ず)酒色と淫楽(いんがく)をこのみ、又、博奕(ばくえき)をこのみて、いさ(諫)めをふせぎ、はぢをしらず、友を引きそこなふもの也。
必(ず)其子をいましめて、かれにまじはらしむべからず。
一たび是とまじはりて、其風にうつりぬれば、親のいましめ、世のそしり、をもおそれず、とが(咎)をおかし、わざはひにあへども、かへり見ず。
もし幸(さいわい)にして、わざはひをまぬがるといへども、大不孝の罪にをち入りて、悪名をながす。
わざはひをまぬかれざる者は、一生の身をうしなひ、家をやぶる。
かなしむべきかな。

<現代語訳>

子弟を教育するには、最初に子供の交際する友を選択することを要(かなめ=大切なこと)としなければならない
その子が出自(生まれ)が良く、父の教えが正しくとも、放逸(節度をわきまえず、勝手気ままに振る舞うこと)である無頼(定職を持たず、素行の悪いこと)の小人(器量の小さい人、小人物)に交わって、それと行き来すれば、必ず彼に引きそこなわれて悪くなっていく。
況んや(まして)、その子の出自(生まれ)が良くなければ、なおさらである。
古人(昔の世の人)の言葉に、「年齢の若い子弟は、例え一年間、書(四書五経など)を読まなくとも(読まないのは良くないことであるが)、猶それよりも小人と一日交わるべきではない。」と云う。
一年書を読まないことは大変悪いことではあるが、猶それよりも、一日小人と交わることのほうが害があるということである。
これは悪友の非常に害があることを言っている。
人の善し悪しは、皆友によりけりである
古語(古人の言)に曰く、「まっすぐに伸びる麻の中に生えれば、曲がりやすい蓬も影響を受けてまっすぐに伸びる」
また曰く、「朱に交われば赤くなり、墨に近づけば黒くなる」ということは、まことにその通りである。
若い時には、血気(旺盛な活動意欲)はまだ定まっていない。
見ること、聞くことに影響されやすいが為、友が悪ければ悪い方向へ行くのは簡単である。
もろこし(支那)では、公儀の法度(国・政府が禁止している事柄)を恐れず、自らの家業に努めないものを無頼(定職を持たず、素行の悪いこと)という。
これは放逸で、父兄の訓えに従わない、いたずら者(無益で役に立たないもの)である。
無頼の小人は、必ず酒色(飲酒と女遊び)と淫楽(淫な楽しみ)を好み、博奕(ばくち、勝負事)を好み、諫め(忠告、諫言)を聞かず、恥を知らず、友を引き損なうものである。
必ずその子を戒めて、彼と交際させるべきではない。
一旦彼と交わって、その風に影響を受けてしまえば、親の戒め、世の中の誹り(そしる言葉、非難)をも恐れず、咎(咎=罪)を犯し、災いにあっても反省することはない。
もし幸いにして、災いを免れることができても、大不孝(親孝行でないこと)の罪に陥って、悪名(悪い評判)を流すことになる。
災いを免れない者は、一生身を持ち崩し、家を破る(家名を汚す)。
悲しむべきことである。

・・・『荀子・勧学』の「蓬麻中に生ずれば 扶けずして直し」
即ち、まっすぐに伸びる麻の中に生えれば、曲がりやすい蓬も影響を受けてまっすぐに伸びるということ、
善人と交われば、自然に感化されて善人になることのたとえ、です。
友人の大切さは、古今東西さまざまな表現で繰り返し言われていますが、人の一生に多大な影響を及ぼすことからでしょう。

麻中の蓬(まちゅうのよもぎ)」とも言います。

人は、常に自分よりもレベルの高い人と交わるよう努力・工夫すべきであると昔から言われます。

親御さんは、子供さんの交友関係に日々細心の注意を払っておくべきことではないでしょうか。

posted by at 16:27  |  塾長blog

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