漢字が脳を活性化

「心」という漢字の字源は、「象形。心臓のこと。其形を象る。轉じて意識・感情の府の義とし、又物の眞中をいふ。」と、(大字典 栄田猛猪文学博士著 講談社昭和三八年版)にあります。「ココロ 五臓ノ一 情、意、知・情・意ノ府、タマシヒ オモヒ、カンガヘ 思望、ワケ、ムネ、意味、原因、中央、マンナカ 星の名、」

大字典 背表紙

「心」の熟語には、心力(シン・リョク)、心入(ココロ・イレ)、心木(シン・ボク)、心友(シン・イウ)、心中(シン・チュウ)。心化(シン・クア)、心月(ココロ・ツキ)心太(トコロ・テン)、心火(シン・クア)・・・と、沢山の熟語があります。

心部

「大字典」は筆者が古本屋さんで見つけた宝物です。文字に対する興味を持つ賢い塾生には、伝えたいことがたくさんあります。

さて、石井勲先生著作「0歳から始める脳内開発ー石井式漢字教育」の「第一章 赤ちゃんの脳力アップは漢字から」に、「漢字で育った子どもの脳は三倍早く動き出す」という項目があります。引用してご紹介します。

漢字で育った子どもの脳は三倍早く動き出す

1996年、電機通信大学の研究室と、NTTの研究所との共同研究によ って明らかになったもので、とても興味深い実験結果があります。これは漢字を見たときに、脳がどのように働くかということを科学的に 調べたものです。「漢字」を見た場合は、左脳も右脳も一緒に働いてい ることがわかりました。

ところが「かな」の場合には、左の脳しか働かないのです。しかも、左 の脳で働く部分も、漢字のときに働く部分とは、ちょっと場所が違うことも わかりました。

この研究ではっきりしたことは、われわれはものを見れば、漢字であ ろうとかなであろうと、見た瞬間に脳が働くだろうと思い込んでいたので すが、どうもそれは違ったようです。かなと漢字では、脳が働く始動の 時間と場所が違うことがわかったのです。

つまり見た瞬間、といっても零コンマ何秒という時間ですが、漢字と “かな”を比べると、“かな”のほうが三倍も時間がかかるのです。です から、漢字で育った子どもとかなで育った子どもとは、脳が働き出すス タートが違うのです。漢字のほうが三倍も速く活動を開始しているので す。

次の二つの文章を比べてください。どちらが早く、かつ正確に意味 がわかるでしょうか。

「きよう、とうきょうえきにいもうとをむかえにいきます」

「今日、東京駅に妹を迎えに行きます」

零コンマ何秒という差はささいな違いじやないかと思われるでしょう が、とんでもないのです。本を読み出すようになってから、スピードに 三倍の違いがあるということは大変な違いです。

私は脳を専門とする学者ではありませんから、くわしいことはわかりま せんが、三倍も早く脳が動き出すということは、脳全体の性能も違うよう に思えてなりません。

私たち大人は“かな”から学習したので、字を見て頭が働き出すのが いつも鈍いのです。そういう意味でも、幼児から漢字教育を始めること は大切です。

ポイント:子どもというのはあるがままをパッと受け入れてしまう、全体 的につかむのが得意です。私たち大人は、構成されている 細かなものから認識を始めて全体をつかみます。ところが子 どもは曖昧なものでも、ぼんやりとしたままでも、丸ごと呑み 込んでしまうのです。

・・・「漢字で」学ぶことの意味合いを繰り返し指摘されています。

ところで、人は、「やらなければならない」ことよりも、「やらなくても、誰も困らない」ということに、意外と熱中しやすいのではないか、と思います。それは、極めることが、無常の喜びという人によって、歴史を書き換えるような大きな発見や事績に繋がったりします。

ご紹介した「大字典」は、栄田猛猪文学博士が「困難な生活のうちに、寝食を忘れて刻苦十有余年、この国字化した文字の字書を完成してこれを漢和辞典と呼ばず、単に『大字典』と呼ばれた」と、序文に金田一京助博士が書かれた程のものです。日本人の素晴らしさがよく判る大著作です。

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