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子供の読書習慣が学力を決める8(子供に読んでほしい本)

長崎市江戸町にある難関大学・医学部を目指す幼児教室・学習塾 羅針塾では、将来の日本を支える人になる為に、志を持って自ら学んで行く塾生を育てていきたいと考えています。

読書をする習慣をいかに幼少期につけていくかが、子供の学力向上に直結しています。

「致知」令和元年(2019)9月号からの引用の続きをご紹介いたします。

いまの子供にぜひ読んでほしい本
土屋 その上で、子供たちにぜひとも読書を習慣にしてほしいと思うのは、読書によって学力のみならず、徳性が顕著に養われることを実感しているからです。思いやりや感謝、尊敬、利他心、抑制といったような、人間だけが持つ高次元の心の働きを僕は徳性と呼んでいるんですけど、これらが育つことが読書の何よりの効果ではないでしょうか。
先ほど僕が国語教育に使っていた名文をいくつか紹介しましたけど、それを唱和した子供たちの感想文を読むと、確かに徳性が育っていることがうかがえるんですよ。「『鳴門』は、くやしい時、口に出てきて気持ちがやわらぐ」
「よしやるぞという時は、やっぱり『走れメロス』です」
「『鳴門』や『太平洋』の詩を思い出すと、雄大な気持ちになり、心が晴々とする。そして、心の中の怒りや悔しさも、すぐに心のうちで縮こまってしまう」こういうのを読むと、やってよかったと実感するんですね。 

川島 先生は、いまの子供や若い人にどんなものを薦めたいですか。
土屋
 やはり戦後教育がおろそかにした、縦軸の言葉を与えたいですね。

まずお薦めしたいのが、かつての文部省唱歌です。これは当時の文部省が一流の文人に作詞を依頼してつくられたものなんですけど、例えば「われは海の子」に出てくる漢字は全部訓読みの大和やまと言葉ですし、七五調なんですよ。他にも日本の自然の移ろいが美しく描写されている唱歌が多いので、ぜひとも親しんでほしいですね。
それから和歌。短歌、俳句は日本のオリジナル文化ですからね。そして先ほど紹介した「鳴門」のような、文語の定型詩もいい。
いまは愛着障碍の問題もありますから、母と子の情が描かれている作品にもぜひ触れてほしいですね。例えば『杜子春とししゅん』なんかいいじゃないですか。主人公の杜子春が自分のためにむち打たれている母を見て、鉄冠子てっかんしとの約束も忘れて涙を流しながら「お母さん」と叫ぶところは心を打たれます。
人間の心の弱さを自覚する上では『蜘蛛くもの糸』を読むといいですね。しかもあの作品はとても丁寧な文章で書かれていますから、言葉の勉強にもなります。通行の難所で多くの人が命を落とすのを見かねた和尚が、人々のために30年がかりでトンネルづくりに尽くす『あお洞門どうもん』の話もいいですね。川島 どの本もなつかかしいですね。

土屋 古典であれば、『平家物語』の「おうぎの的」なんかいいですね。那須与一なすのよいちが扇を見事に射抜くと、源氏方も平家方も敵味方を忘れてたたえ合う。最近の日本人はギスギスしているから、ぜひああいう大らかさに触れてもらいたいですね。
それから、スマホばかりいじって自然に対する感覚が鈍っている最近の子には、先ほどご紹介した徳冨健次郎の『自然と人生』もいいですし、文語文ではないですけど、富山和子さんという環境問題評論家が子供向けに書いた本も読んでほしい。『森は生きている』をはじめとするシリーズで、生命が循環していることを分かりやすく書いてあるんです。
親御さんにはメリメの『マテオ・ファルコネ』をお薦めしたいですね。スペインのコルシカ島に住む銃の名人に待望の男の子が生まれるんですが、その子が少年になって留守番をしている時に銀貨の誘惑に負けてかくまったお尋ね者を、今度は銀時計の誘惑に負けて兵隊に引き渡してしまう。事情を知った父親は、こんな裏切り者は私の子ではないと最愛の息子を銃で撃ち殺してしまうという、衝撃的なストーリーです。信義という価値に対する筆者の思い入れの深さを表しているわけですが、戦後に精神が柔になってしまった日本人には、時にこういう価値観にも触れてほしいですね。

 

・・・当塾でも小学1〜3年生くらいまでの音読本として、少年少女世界の名作(集英社版)昭和42年初版本「家なき子」(マロ原作)を実際に用いています。句読点でしっかり息継ぎ(鼻呼吸)をしながら、数行先を目で追えるよう訓練しています。正確に読むことのみならず、内容を把握して表現を工夫するようになるには、繰り返し読む必要があります。

毎日15分ずつでも、継続することで読解力も上がってきます。

家庭でスマホやゲームに時間を割くのではなく、本来の「学び」に名作の音読をすることをお勧めします。

posted by at 19:02  | 塾長ブログ, 国語力ブログ

子供の読書習慣が学力を決める7(子育てとスマホの弊害)

長崎市江戸町にある難関大学・医学部を目指す幼児教室・学習塾 羅針塾では、将来の日本を支える人になる為に、志を持って自ら学んで行く塾生を育てていきたいと考えています。

子供の学力向上以前に、乳幼児へのスマホの影響について、「致知」令和元年(2019)9月号からの引用の続きをご紹介いたします。

子育てはスマホをオフにして

川島 さらに僕がいま一番心配しているのが、乳幼児へのスマホの影響です。先ほど先生がおっしゃった愛着障碍も、一番の原因は実はスマホだと思うんです。多くの母親が、授乳時に子供を見ないでスマホを見ているんですよ。

医療現場では、母乳を飲ませることが大切だということは教えられるんですが、授乳がコミュニケーションだという教育は行われていないんですね。ですからお母さんは、赤ちゃんにおっぱいをあげながらスマホをいじっているんです。

最近は知育アプリというのも出てきました。スマホの画面に現れたキャラクターが「いないいないばぁ」をしたりするんですが、親はそれを見せておけば子供が賢くなると思い込んでしまう。結果的に、親子がしっかり向き合わなければならない大切な時期に、スマホとばかりコミュニケーションして育つ子供が山のようにいます。

一時期神経小児科医がサイレント・ベビー症候群と呼んで盛んに警鐘けいしょうを鳴らしていましたけど、最近はあまり言わなくなりましたね。土屋 平成16年頃に「ながら授乳をやめましょう」ということが盛んに言われていました。他人と目を合わさず、言葉の遅れが著しい子がどんどん増えてきているから、テレビやスマホのスイッチをオフにして、ちゃんと我が子の目を見て、言葉掛けをしながらおっぱいをあげてくださいと訴えていました。

川島 それがいまではすっかり鳴りを潜めてしまって、いま小学校を訪れると、明らかに表情に乏しくて、他人の気持ちを読む能力に欠ける子が大量にいるんですね。
この状況を変えていくには、時間はかかりますけど、これから親になる子供たちに、スマホの使い過ぎは問題があること、子育てで大事なのはコミュニケーションだということを直接教えていくしかないと思うんです。

土屋 本当におっしゃる通りです。スマホ授乳は、虐待に等しい行為と言わざるを得ません。
僕が昭和40年に教員になった頃、発達障碍の有病率は1万人に1人でした。これが2、3年くらい前の調査では15人に1人にまで激増している。しかし、先ほども言いましたように、その多くは愛着障碍だと僕は解釈しています。
そして、それは言葉の教育や、母と子のコミュニケーションによって愛着の再形成が可能であることを、僕は活動を通じて実感しています。

 

・・・子供の学力向上以前に、また言葉の教育以前に、生まれたばかりの赤ちゃんへの母親の向き合い方がとても重要であるとのお話です。

お母さんが妊ってからの胎教も、母親の心の安定が一番大事です。その延長として出産後の赤ちゃんに接する母親がスマホなどに囚われて子供の目を見ないというのは、意思疎通を図ろうとしないことになります。

その結果、子供が「発達障害」と判定されてから、母親が大慌てで対応に追われる、という話もあります。

ネット・ワーク社会の必需品ともいえるスマホの普及率の高さが、社会の様々な階層に弊害を与えているという事実は、「情報」を遮断して家族を守るべきときに来ているのかも知れません。

 

posted by at 16:43  | 塾長ブログ, 国語力ブログ

子供の読書習慣が学力を決める6(スマホの弊害)

長崎市江戸町にある難関大学・医学部を目指す幼児教室・学習塾 羅針塾では、将来の日本を支える人になる為に、志を持って自ら学んで行く塾生を育てていきたいと考えています。

読書をする習慣をいかに幼少期につけていくかが、子供の学力向上に直結しています。

「致知」令和元年(2019)9月号からの引用の続きをご紹介いたします。

スマホの使い過ぎが脳の発達を止める

 

川島 いまのお話と深く関係していると思うのが、スマホの弊害です。
スマホやタブレットの利用時間が長い子供たち約200人の脳の発達を、MRI(磁気共鳴画像)を使って3年間調査したことがありましてね。利用頻度の少ない子はちゃんと3年分発達していたのに、利用頻度の高い子は脳の発達が止まっていました。言葉を司る前頭葉と側頭葉の発達が、右脳も左脳も止まってしまって、白質はくしつという情報伝達の役割を果たす部分も大脳全体にわたって発達が止まっていたんです。

 

土屋 それは大変なことですね。

 

川島 もう少し詳しく見ていくと、スマホやタブレットの利用が1日1時間未満、もしくは使わない子は特に影響はないんですが、それが1時間以上になると、利用時間に応じて学力に対するネガティブな影響が大きくなるんです。
ですからスマホ、タブレットの使い過ぎは、明々白々に脳の発達を阻害しています。学力を含めてすべての能力が上手く発現できない状態に陥ってしまい、いくら勉強しても、睡眠を十分とっても成績が上がらない。先ほどご紹介した読書の効果の逆です。
これは大学生を対象に実験した時も同じでした。スマホやタブレットを手放せない学生は、大脳白質を中心に画像でハッキリ分かるくらい劣化している。その上、うつ的な状態も発現しやすいし、自己抑制能力も大幅に低下することが分かっています。
あまりにもハッキリとデータに現れるので、スマホを長時間使い続けることで特定の遺伝子に何か起こっているのではないかと考えて、最近はその解析に取り組んでいるところなんです。

 

・・・スマホやタブレットの使用頻度が高い子供から大学生まで脳の発達が止まる。

これは社会全体の問題です。社会人の創造性が落ちているという指摘もスマホやタブレットの使用頻度が高いからと言えるのではないか。ある会社の管理職のお話では、社内教育を進めようとしても、若手の社員がついてくることが出来ない。これは言葉(語彙)の理解力が足りないだけでなく、新しいことに取り組む意欲がないのではないか、と。

言葉を司る前頭葉と側頭葉の発達が、右脳も左脳も止まってしまって、白質はくしつという情報伝達の役割を果たす部分も大脳全体にわたって発達が止まっていた」という事実は、スマホやタブレットの長時間の使用を即刻止めなければいけないのではないか、と危惧します。

テレビの出現した60年前にも同様の議論がありました。MRI(磁気共鳴画像)などの医療機器によって問題の根本が分かった以上、各家庭ですぐに対策を講じ、周りに流されてスマホの使用を続ける愚を避けるべきではないでしょうか。

 

posted by at 15:00  | 塾長ブログ, 国語力ブログ

子供の読書習慣が学力を決める5(子供は本能的に言葉を欲している)

長崎市江戸町にある難関大学・医学部を目指す幼児教室・学習塾 羅針塾では、将来の日本を支える人になる為に、志を持って自ら学んで行く塾生を育てていきたいと考えています。

読書をする習慣をいかに幼少期につけていくかが、子供の学力向上に直結しています。

「致知」令和元年(2019)9月号からの引用の続きをご紹介いたします。

子供は本能的に言葉を欲している
土屋それから、これは僕がやってきた言葉の教育とも深く関係する問題ですが、最近愛着障碍の子がとても増えているんです。発達障碍しょうがいと症状がよく似ているのですが、赤ちゃんにとって母子密着が最も必要で母の愛語をたっぷりもらわなければならない時に、仕事などの都合で母子分離という養育環境に置かれ、しっかりした母と子の絆がつくれないところに原因があると言われています。
しかし、そういう子でも言葉の教育をやっていくと、薄紙をがすように徐々に徐々によくなっていくんですよ。先ほどからの川島君のお話から察するに、これはやっぱり語彙が増えてくることが大きいのではないかと思うのですが。
川島実はいま、読み聞かせのプロジェクトというのをやっていまして、読み聞かせをする際の親子の脳をそれぞれ測ってみたんです。すると驚いたことに、母親の脳は前頭葉ぜんとうようの真ん中の相手を思いやる領域、コミュニケーションを司る領域が一番働いていたんですよ。親にとって読み聞かせというのは、文章を読むというより、子供に高次のコミュニケーションを仕掛けて反応を読み取る脳活動が活発になっていることが分かりました。
ではその時に子供の脳はどうなっているかというと、話を理解する時に働く前頭葉ではなくて、辺縁系へんえんけいという感情を司る部位が活発に働いていたんです。
つまり幼い子への読み聞かせというのは、親が子供に心を寄せ、子供はそれを受けて感情を揺さぶられる、そういう作業だったことが脳科学で見えてきたんです。通常の文章を聴いている時の脳活動とは明らかに違う働きが見られるんですね。

土屋
母親による読み聞かせは、他人のそれと異なり、特別な意味があるに違いないと思っていましたので、実に興味深いお話です。

川島
山形県の長井市で、幼稚園児のいるご家庭に本を提供して実験しましてね。読み聞かせを受けている子供たちは、やはり言葉を扱う能力が伸びていました。しかし一番大きな効果は、親の子育てストレスがガクンと減るということだったんです。子供に読み聞かせをする時間が長ければ長いほど、それがデータにハッキリ現れるんですよ。
読み聞かせによって親子の愛着関係がしっかり結ばれるので、子供が親を引き付けるために悪さをしたり、親の理不尽な仕打ちを想像してビクビクしたりということがなくなるんです。
土屋先生がおっしゃるように、いまは愛着関係がきちっと結べていない親子が多いのが現状ですね。しかし、読み聞かせで親子の濃密な時間をつくれることが科学的に分かってきたことで、この問題に大きなくさびを一つ打ち込むことができると思うんです。土屋とても貴重なデータを導き出していただきました。
僕がある保育園で授業をした時のことです。キーワードを漢字で書いたカードを見せながら短いお話をしました。そして、お話の後で「これ何でしたっけ?」とカードを示すと、すべて読むことができるのです。この中に、いわゆる多動の子がいたとのことです。
午後の研修会で先生方がその子について「○○君が全く目立ちませんでした。皆と同じようにお話を聞き、カードを読んでいる。信じられません」と驚いていました。
その後も、言葉の時間を楽しみにしていて、きちんと席について、皆と一緒に音読をするとの報告を受けています。
実は、これはこの園に限らず、どこの園でも同じように見られる光景なのです。障碍のある子供でも、本能的に言葉を欲している。僕はそう感じるんです。

 

・・・「読み聞かせをする際の親子の脳」を計測するというプロジェクトはとても興味深い話です。

「つまり幼い子への読み聞かせというのは、親が子供に心を寄せ、子供はそれを受けて感情を揺さぶられる、そういう作業だったことが脳科学で見えてきた」ということです。

「母親の脳は前頭葉(ぜんとうよう)の真ん中の相手を思いやる領域」

「子供の脳は話を理解する時に働く前頭葉ではなくて、辺縁系(へんえんけい)という感情を司る部位」

正に母親の子供への愛情が子供の感情に大きく影響を与える、という昔からの考え方を証明しています。

赤ちゃん~幼児期に「母子分離」という養育環境に置かれた子供であっても、その後の「言葉の教育」によって補っていくことはできるとも言われています。

その為には、日頃から子供の言動に気を配り、親や先生方の言葉をしっかり理解しているか、それに対する子供の言葉の応答を確認する必要があります。

そして、毎日決まったスケジュールで読書をしっかりさせることです。その為の「素読」「音読」は極めて大事な習慣です。

posted by at 18:30  | 塾長ブログ, 国語力ブログ

子供の読書習慣が学力を決める4(現代人に必要な縦軸の言葉)

長崎市江戸町にある難関大学・医学部を目指す幼児教室・学習塾 羅針塾では、将来の日本を支える人になる為に、志を持って自ら学んで行く塾生を育てていきたいと考えています。

読書をする習慣をいかに幼少期につけていくかが、子供の学力向上に直結しています。

「致知」令和元年(2019)9月号からの引用の続きをご紹介いたします。

 

現代人に必要な縦軸の言葉

川島 具体的に、どんな指導をなさってこられたのですか。

土屋 文語文の素読、音読が中心でした。戦後の国語教育というのは、布の生地でいうと、横糸と縦糸の横糸だけで教育を施すようなものです。ですから縦糸の言葉に当たる文語文、僕は「縦軸の言葉」と呼んでいるんですけど、それをちゃんと学んでバランスを取らないと丈夫な生地ができないと考えたわけです。
最初に採り上げたのが徳冨健次郎(蘆花ろか)の『自然と人生』でした。結構難しいので最初は戸惑いもありましたけど、思い切ってやってみたら、子供たちがとても喜んでくれたんですよ。これは大きな自信につながりましたね。
例えば「立秋りっしゅう」という一文。

秋、今日立つ。芙蓉ふよう咲き、法師蝉ほうしぜみ鳴く。
赫々かくかくとして日熱するも、秋思已しゅうしすでに天地に入りぬ。

文語文特有のキリッとした味というか、格調高さがあって、声に出して読むと実に気分がいいじゃないですか。それから、戦前の国定教科書にもすごくいい詩があるんです。例えば「鳴門なると」。

阿波あわ淡路あわじの はざまの海は
此処ここぞ名に負ふ 鳴門の潮路しおじ
八重やえの高潮 かちどき揚げて
海の誇りの あるところ

こういう名文を模造紙に墨書して黒板に貼り、生徒たちと唱和したものです。それから「太平洋」。

波濤はとう千里 洋々と
東にうねり 西に寄せ
づる国の あかつき
雄々しく歌ふ 海の歌
黒潮こえて いざ行かん
我等の海よ 太平洋

気宇壮大きうそうだいでしょう。他にも高村光太郎の「最低にして最高の道」、宮澤賢治の「雨ニモマケズ」、土井晩翠ばんすいの「星落秋風五丈原ほしおつしゅうふうごじゅうげん」。さらには漢詩もやりました。日本人は文語文を1,000年以上使ってきたわけですから、遺伝子に刻み込まれていると思うんです。子供たちが喜んでくれたのは、きっと眠っていた文語文の遺伝子がスイッチ・オンになったからでしょうね。

川島 確かに文語文のリズムというのはとても心に響きますね。いま使っている口語体はそういうものに乏しいけれども、特に大正、明治後期の文学作品はリズム感がすごくあって、朗読を聞いても、自分で読んでも気持ちがいい。
僕が『脳を鍛える大人の音読ドリル』をつくった時も、リズム感がほしかったので、その頃の文学を選んだんですけど、土屋先生のお話を伺ってそれで正解だったのだと改めて思いました。

・・・「文語文の素読、音読」は、幼児期からの国語教育の根幹である。正にそこに全ての学問に励む力を育む基本があると言えます。

文語文(古典語。平安時代の言語に基づき、それ以後の時代の言語の要素をも多少加えた書き言葉。近世から明治前期の文章語を含めて言う。)を、「縦軸の言葉」と土屋先生は表現されています。大東亜戦争終結後八十年。戦後の日本の国語教育は、「日本らしさ」を骨抜きにするような教育であると言われているかのようです。

つまり、「戦後の国語教育というのは、布の生地でいうと、横糸と縦糸の横糸だけで教育を施すようなものです。ですから縦糸の言葉に当たる文語文、僕は『縦軸の言葉』と呼んでいるんです」、と。

文中の高村光太郎の「最低にして最高の道」をご紹介します。

最低にして最高の道

もう止さう。
ちひさな利慾とちひさな不平と、
ちひさなぐちとちひさな怒りと、
さういふうるさいけちなものは、
あゝ、きれいにもう止さう。
わたくし事のいざこざに
見にくい皺を縱によせて
この世を地獄に住むのは止さう。
こそこそと裏から裏へ
うす汚い企みをやるのは止さう。
この世の拔驅けはもう止さう。
さういふ事はともかく忘れて、
みんなと一緒に大きく生きよう。
見かけもかけ値もない裸のこころで
らくらくと、のびのびと、
あの空を仰いでわれらは生きよう。
泣くも笑ふもみんなと一緒に、
最低にして最高の道をゆかう。

注)この高村光太郎「最低にして最高の道」は、昭和21年8月6日発行の文部省教科書『中等國語一[後]』に掲載された詩です。『中等國語一[後]』の教科書は、昭和21年度の1年間だけしか使われませんでした。翌昭和22年には新制中学が発足して、新しい教科書が作られたからです。新しい教科書には、光太郎のこの詩は載りませんでした。

言わずもがなですが、昭和22年からの「新しい教科書」が戦前の国語教育を消し去り、改訂を繰り返しながら、現在までの貧弱な国語教育を継続しているのです。

posted by at 14:13  | 塾長ブログ, 国語力ブログ
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